ある会社の会議でのことだ。
5S(整理・整頓・清潔・清掃・躾<しつけ>)に関する討議を
進めていた時、社長から、次のようなアドバイスが飛んだ。
「綺麗な会社なんてない、片付けている会社があるだけ!」
と、力強くメンバーに諭された。
居合わせた私は、この会社がメーカーという汚れやすい職場で
ありながら、いつも社内がピカピカであり極めて機能的に
全ての機械や備品を維持しておられる
――この社長の言葉にまさにその原点(根本精神・スピリッツ)
に触れた想いがしたのである。
新品だから・未使用だから・新しいからきれいなのではない。
手入れをしたり、片付けるという日々の行動があってこそ、
それは維持されるという考えだ。
社長のこの考えの本質は、丁寧に使っていなかったり、
的確な配置やメンテナンスをしていないものは、
いくら真新しいものであってもきれいとは言えないということに
違いない。
いくら経営や品質管理を勉強し5Sの知識をもっていたとしても、
5Sに取り組む姿勢や態度が生半可であっては真の出来栄え(きれ
いさ)は生まれてこない。
この原点を改めて学ばせていただいたように想う。
私はこの力強い社長の言葉を幾度となく噛みしめる中で、
ある情景を想い出していた。
それは、私がコンサルタントして駆け出しの頃、
赴任していた中華民国台湾での出来事である。
現地の企業が手掛けるある製品の不良率改善プロジェクトに
取り組んでいた時、先輩コンサルタントがしみじみと私に
語った言葉 ―― それは
「品質は、態度」
というものだ。
「我々コンサルタントは、ともすれば策(テクニックや手法)に
溺れがちだ。これらも大切だが、それ以上に何が何でも
不良品を低減し、品質を高めるというブレのない姿勢こそが
不可欠なのだ」
と、導かれこころが震えたあの瞬間が蘇ったのである。
どうすればいい結果(今回の場合、きれいになる・不良率の
改善等)がでるだろうかという思案・検討も大切だが、
それ以上に、自らの姿勢や態度を何が何でもやり切ると定め、
日々淡々と取り組んでいくことが何よりかけがえのないもので
あると実感したのは間違いない。
私はこのような想いを胸に、年末恒例の大掃除を行った。
日々増え続け膨らんだ資料や書籍、そしてメール。
自分としては、
「年末の大掃除より、毎月の中掃除・毎日の小掃除」
という態度で、
「毎日30分の片付けを!」
と宣言し取り組んできた。
が、想っていた以上に色々なものを溜め込み、
片付けを疎かにしている自分の姿がはっきりと浮かび上がってきた。
色々な考えや、こうすればいいああすればいいと
迷うような気持ち、そして何よりだらしのない自分を
責めるような意識が起ってきたが、それらを一切相手にせず、
ただ片付けるという行為を一心不乱に行った。
結果としては、何ともすがすがしい気持ちになり、
新しい1年をまた張り切ってやるぞという元気や
勇気をもらったように想う。
言うなれば新年のスタート前に
「こころスッキリ、頭ハッキリ、身体ウズウズ」
の自分に、立ち戻れた気がするのである。
このような中、新年早々、弊社の講座でご一緒させていただいた
プロボウラ−−鷲見(すみ)光保氏(日本のボウリングを当初から
支え、数々のプロを育ててこられた方)からは
「カタチはこころを誘発する」
という座右の銘を教えていただいた。
つかみ所のないこころを相手にするのではなく、
カタチあるものから入るそれは、身体の姿勢やフォーム、
そして行動。
それを進める中で、こころがカタチに引っ張られて変化が
生まれてくるという教えであると感じたのである。
瞑想(メディテーション)、特に坐禅の教えでは、
「調身・調息・調心」という言葉がある。
姿勢を正し、一定間隔のゆっくりと長い息をすれば、
おのずと邪念が抜けこころ穏やかになるというものだ。
今回の事例では、あれやこれや(理屈を言う・やる価値を問う等々)
と言う前に、まず片づけるという態度や行動で表現できる人間に
なることの大切さを学ばせていただいた貴重な体験であった。
誰もが、イライラしたり焦っている時に部屋や身の周りを
片付けてみると、不思議にこころがすっきりするものだ。
そして目標達成からは遠回りのように想えるこのことが、
逆にこころがすっきりして物事が進み、目標をラクラクと
達成した体験を誰でも持っているに違いないのだから。
あなたご自身は何を感じ、何に取り組んでおられますか?
「綺麗な会社なんてない、片付けている会社があるだけ!」
「品質は、態度」
「年末の大掃除より、毎月の中掃除・毎日の小掃除」
「ただ片付けるという行為を一心不乱に」
「こころスッキリ、頭ハッキリ、身体ウズウズ」
「カタチはこころを誘発する」
「調身・調息・調心」
1.あなたはどのような態度で日々仕事や生活をしておられますか?
2.あなたは、身の回りの片付けを、どのように進めておられますか?
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